は、、けもののこ


しばらく前になりますが、バケモノの子なる映画が公開されていたようですね。(今はどうか知りませんが。)
各種メディアのメインビジュアルを見たところ、半狼っぽい?男が主人公(の一人)のようで、一種の獣人系物語なのであろうと思うのであります。
というわけで、以下、中身は知らないので、あくまでタイトルや広告から得られた一獣人愛好家の妄想。


映画のタイトルというのは最大の広告なのだろうと思うのですが、このタイトルで何を訴求しようとしているのかと考えてみると。
まず、「バケモノ」。目に付きますよね、「バケモノ」。まあいい印象じゃないです。字義どおりからすると、化けるもの、ということですが、広告の絵づらからみると化けそうにはないですね。このコトバから連想されるイメージは、まず、人とは異なるもの、混沌としたもの、人知の及ばないもの、形の不定のもの、といった感じ、加えて、人に害をなすもの、汚らわしいもの、知性をもたぬもの、恐ろしいもの、などなどと、まだまだありそうですが、だいたいはまぁそんなあたりかなと。つまりは、社会的、秩序的、倫理的、理性的なものと仮定される存在たる人間、human beingとは異なる位置に座する輩ということになるんでしょうね。なお、カタカナ表記ってのも、あえて負の印象を与えるテクニックのように思えます。
上羽もバケモノ呼ばわりされたことをなつかしく思いおこし(何)
細かいことを言うと、バケモノにはケモノというコトバが入っています。掛け言葉といいますか、暗にダブルミーニングを狙ったタイトリングの可能性もあります。


で、そういう印象がよろしくないコトバをのっけからもってくる。いわば第一印象最悪系なわけであります。
そんなキーワードで読み手にとりあえず負の衝撃を与えておいて、続くキーワードは「の子」。
これも印象論で語るならば、こっちはけして悪い印象を与えるコトバではありません。だいたい「子」っていうと、幼きものなるイメージがついてくると。幼子、守るべき対象、未来への継承者、希望、純粋というふうに、ふつうはどちらかというとプラスのイメージが出てきます。
つまり、このタイトルは、コトバ的にマイナスにプラスを掛け合わせる、逆接的構成になっている。負のインパクトを和らげ、相殺し、ひょっとすると対比効果で印象逆転さえも狙える、そういうタイトルといえなくもないんじゃないかなと感じるわけです。
反社会的、反倫理的、反知性的存在、の子。異端者の子といってもよいでしょう。異端者の子は異端者、かもしれませんが、異端者の子でかわいそう、とか、親が異端者でも子供は別かも、とかいう見方も大いにありそうです。
つまり、内容を知らないので全くの的外れかもしれませんが、人間社会=日常があって、次にそれと対比される非日常・異類たるバケモノがあって、さらに人間社会ともバケモノとも立ち位置が異なる「子」がある、という物語的構図が見えてくるような気がするんですね。「子」を媒介に、異類たるバケモノと、バケモノを異類とみなす人間社会(コミュニティ)がコミュニケーションを図るという展開も十分に予想されるわけです。
なお、この手のハイブリッドタイトルですぐ思いつくのは、「おおかみこども…」です。こちらも内容は知らないのですが、「おおかみ」に「こども」をぶつけてくるあたり(しかもひらがな)が、あざとさを伴う計算されたタイトルだなと。(いや上羽的には「おおかみ」は萌えワードですよ? あくまで消費者一般を統計的にみて、おおかみで萌える人は少なかろうと、そういうことです。)


かようにタイトルは第一印象を定義する極めて重要な位置付けを有しており、商業的にはトータルの広告戦略を定立する上でコンセプトビジュアルとともに柱となるんではないかと想像します。獣人という、反人間社会、反日常の存在をテーマとする作品の社会的展開を図るには、タイトリングもまた重要なツールになるのでありましょう。
すなわち、表現者は、自分が表現したいことを表現し、伝達しようとするわけですが、それが社会のニーズに合致して受容されるかどうかは別の次元です。サプライサイドとデマンドサイドの意思が合致しないと取引は成立しない、表現が読み手に届かないわけで、社会的には成功とは言えません。必ずしもデマンドサイドのニーズが高いとはいえない獣人概念を「売り込む」には、サプライサイド(表現者)において、ニーズに合わせ広告戦略を打つという計算高さも求められるのかもしれません。


情報も分析もない状態でこんな雑文を書くのはどうかとも思いましたが、あくまでメディア広告とその受け手の関係における感想めいた妄想ということでお許しください。


(上羽的ひとこと)
でも、ケモノの子は、ケモノだよね?


というわけで(どういうわけだか)今日のBGM
”Make Total Destroy” Periphery
"Rejoice aloud. Let these words imbue…"