つきもの、つけもの、つけけもの

 世の中には憑きものというのが色々あるようでして、かの俳聖松尾芭蕉も、奥の細道で、そぞろ神に憑かれたと白状しておりますし、異国ではアッカドの暴君ネブカドネザル王が狼に憑かれたといわれております。このほか、狐憑き、犬神憑き、など取り憑くものも様々でございます。
 さて、憑きものの中には一風変わったのもございまして、ウソ、というのは鳥の一種ですが、これがなかなかにおしゃべりな鳥でして、この鳥の魂だか霊だかが取り憑くと、あることないことそれはもうべらべらとしゃべるようになる。それで、鳥のウソが取り憑いた人のことをウソ憑きというようになりました。ウソの木像を取り換えることで、ウソを真に変えるというウソ替え神事も各地で行われております。また、ウソはカラスのように光るものを集める習性がありまして、ウソが取り憑いた人も、金属や宝石などを盗み出すと信じられておりました。これが「ウソ憑きは泥棒の始まり」であります。
 …などというのは真っ赤な「うそ」でございます。ウソ替え神事というのがあることは本当ですよ。
 ちなみに、かわうそという動物がおりますが、かわうそ憑きというのはあまり聞きません。それもそのはず、かわうそは日本では既に絶滅してしまったからですね。
 野生のかわうそは獲った魚を河原に並べると伝えられておりまして、これを獺祭といいます。かわうそが祭りをしていると風流に見立てたわけですが、魚を並べただけで祭りとはいささか寂しい感じもあります。
 なお、かわうその展示に力を入れているところとしては、油壺マリンパークがあります。ここの「かわうその森」にはコツメカワウソが展示されておりまして、指タッチなどもできるそうです(要予約)。
 あまりに脱線しすぎて本題に入る前に長くなってしまいましたので、続きはまたおいおい。