鼻づら主義者と耳しっぽ主義者…越えられない壁なのか?(補1)

補論a 動物変身は鼻づら主義と親和的か?

 獣人の範疇に属するものに、動物変身の物語がある。これは、人間が動物になるという点において共通する物語である。(動物が人間になる場合もあるが、これを人間から動物への変身と同じ種の物語と捉えてよいかどうかについては、慎重な検討が必要であろう。)
 動物変身の物語の多くはサンクション(懲罰)性を有する。すなわち、動物変身は好まれざる結果である。したがって、マズルを好む鼻づら主義との親和性が真に強いかについては、さらなる検討を待たねばならない。
 もっとも、物語においてサンクション性を有しているとしても、動物変身が読み手に好ましい表現として用いられているのであれば、鼻づら主義に整合的とも考えられる。
 一方、動物変身は、通常、外観的には完全な動物への変化であり、外観上は人間的要素がない。動物変身も物語上の獣人といえるとは考えられるものの、外観上人間的なるものにマズルを付与したいという鼻づら主義的な欲求を満たすものとなりうるかについては疑問である。