鼻づら主義者と耳しっぽ主義者…越えられない壁なのか?(9)

本論 〜 鼻づら主義と耳しっぽ主義の分析

第三章 鼻づら主義と耳しっぽ主義、どっちがリアル? 〜 表現の問題(承前)

 人間キャラクターに追加的に付加するだけですむ耳やしっぽは、象徴的なものとして、ノン・リアルに表現されることもままある。むしろ、耳しっぽキャラにおいて、耳やしっぽがリアルに表現されている例の方が少ないのではないかとも思われる。
 こうして見ていくと、おそらく、耳しっぽ主義者は、耳しっぽキャラにリアリティを求めてはいないのである。耳しっぽキャラは理念的にかわいい存在であればよいのであって、現実にキメラ生物として存在してほしいという類のものではないのだ。いわゆる「四つ耳」状態(注)はその最たるものであるが、象徴の問題は次章で取り上げることにしよう。
(注)例えば、水上航「オオカミ少年」。杉崎ゆきる「H2O Planet」(『女神候補生』第1巻収載)にはストレートに「ヨツミミ族」が登場する。


 このように、獣人キャラクターが動物の顔に近いことを選好する鼻づら主義者は、より現実的(リアル)な表現を好むことが多く、耳しっぽ主義者は明らかに非現実(ファンタジー)を好む傾向にある。これは、耳しっぽ主義が、物語における情況の軽薄化のために耳しっぽを用いていることが多いことに通ずる。


 第三章まとめ:鼻づら主義者はリアリストであり、耳しっぽ主義者はファンタジストである